■軽佻浮薄■
こくん、と軽く喉を鳴らして、口中に溜まった唾液を飲み込むと、エドは不満そうに顔を上げた。
「なあ・・・・オレ、下手?」
「そんな事ないケド?見れば判るダロ?」
そう言って、自分の股間を指差すリンのとぼけたような態度に、エドは嫌そうな顔をした。
リンの指差した先では、今までエドがずっと口で奉仕していたそれが屹立している。
「だって、おまえちっともイかねえし。」
口を尖らせて、拗ねたように顎が怠いんだよと文句を言う。
まあ30分以上も愛撫させられ続けていては、不満が出るのも当然だろう。
「ああ、悪イ悪イ、すぐにイくのもったいなくてサ。」
せっかくエドがシテくれてるのニ、といつもの笑顔で何事もなかったかのようにニコニコしてて、それがまたエドにはなんとなく腹が立つ。
「房中術だかなんだか知らねえけど、いい加減にしろよな、こっちが疲れるっての。」
この遅漏!と不満げに言うと「早漏よりいいダロ?」と返される。
そっちのがマシだ!とヤケになって叫ぶエドを、リンはベッドの上に上体を起こした姿勢のまま引き寄せた。
リンの膝の上を跨ぐようにして、エドはリンと向かい合う。
「俺のを銜えてるうちニ我慢出来なくなっちゃっタ?」
そう言ってリンはニヤニヤとエドの顔を覗き込む。
「な・・・!馬鹿、そんなんじゃねえよ!!」
エドはそう言って眉をつり上げるが、とたんに朱に染まった顔色の方が口より正直で説得力が無い。
「そんなこといってモ、こんなにしてるくせニ。」
リンの手がピンと張りつめたエド自身を軽く撫で上げた。
「ひゃ・・・・!」
それだけの刺激で、エドは背をのけぞらせた。
「じゃ、続きはエドの下の口でして貰おうかナ。」
そう言うと、リンは潤滑用のクリームをどこからか取り出した。
するりと手を回してエドの腰をひと撫ですると、おもむろに双丘に手を掛ける。
「あ・・・ちょ・・・・・っ・・・・」
エドが制止するより早く、リンの指がその中心を解すように轟く。
すぐにそれは指先にすくい取られたクリームの滑りを借りて中に入り込んで来た。
「あぁぁ・・・・やめ・・・・・」
「て、欲しくなんカないんだロ?俺の舐めながら物欲しそうに腰揺らしてたくせニ。」
「そ、そんな事、してな・・・・・っ、あぁ!」
「嘘つきだなア。」
そう言いながらリンはエドの中に入れた指の数を増やすと、掻き回すように動かした。
「やっ・・・・激し・・・・・」
リンの絶妙な指の動きに体中の力が抜けていくようで、堪らずにエドはリンの首に思わずしがみついた。
それに合わせるように、リンはエドの中から指を引き抜いた。
くちゅ・・・と体温で溶けたクリームが濡れた音を立てる。
「は・・・リン・・・・」
喪失感にぶるりと体を振るわせるエドに、リンは囁いた。
「後は下の口でシテ貰うって言ったシ。おいで、エド。」
ゆっくりと体を起こすと、熱に浮かされたようなぼんやりした瞳で、エドはリンの顔を見つめた。
「・・・・・このままかよ・・・・?」
「そウ、このママ。」
目の前の男はやはり捕らえどころのない笑顔を浮かべていた。
向かい合ってリンの膝の上にまたがった姿勢のまま、エドはそっとリン自身に手を添える。
「そうそウ、ちゃんと自分デ位置あわせテ。」
どこか楽しそうに指示を出すリンをちらりと見てから、エドはゆっくりと自分の入り口へと導いた。
「そのままゆっくり腰落としテ・・・・・」
「ん・・・・・」
言われるままにゆっくりと腰を沈めると、先ほどの指とは比べものにならない圧迫感に見舞われる。
痛みすれすれの快感に、頭の芯が痺れたようになる。
「く・・・・ふ・・・・・」
耐えるように唇を噛みしめながら、力が抜けそうになるのを堪えてリンを飲み込んでゆく。
リンはその様子を面白そうに眺めていた。
「は・・・・あぁ・・・・」
やがて、一旦動きを止めたエドが、大きく息を吐いた。
「全部入っタ?」
「ん・・・・・」
浅い呼吸を繰り返しながら、エドが頷く。
「じゃ、そのまま動いてみル?」
「そんな・・・無理だって・・・・」
慣れない体勢と圧迫感で、自分から動くどころではない。悔しいがこうしてるだけで精一杯なのだ。
「それじゃずっとこのままだけド?」
意地の悪い笑みを浮かべながら自分を見ているリンをエドは見返した。
なんかの童話に出てきたニヤニヤ笑いを浮かべた猫とかいうのはこんな感じなんじゃないかと、ふと、どうでもいい考えがエドの頭をよぎる。
「ほら、エドが上なんだから、エドから動かないト。」
そう言うとリンはエドの腰を支えながら、下から軽く揺すった。
「ひぅ・・・・っ!む、無理だって、ホントに・・・・」
自らの体重で深く貫かれる感覚と、いつもと違う所に当たる快感に、膝は情けないほどがくがくと笑っている。
「しょうがないナ、普段は暴れ回ってるくせニ、こういう時だけ大人しいんだから。」
「うるせぇ・・・・仕方ねえだろ、慣れねえんだから。」
眉根を寄せて苦しそうに訴えるエドの顔色を読みながら、リンは苦笑する。
負けん気の強い口調は相変わらずだが、本当に余裕はなさそうだ。
「じゃあ俺がシテあげるから体勢いれかえようカ。」
やれやれと言いたそうな表情のリンが憎らしくもあるが、エドは内心ホッとした。
本当に、自分からどうこうする余裕などないのだ。
王族としての学問の一環とやらで、房中術とかいうのを修めているというリンは、歳の割りにはこっちの方は文字通りの百戦錬磨だ。
そのリンと、どういう訳かこういう関係になってからこっち、元々性に関しては年相応の知識と経験(と、いうかほぼ未経験)しか持ち合わせていなかったエドに主導権があった試しなど無い。
「男はエドが初めてだけド?」と言うリンの言葉も、どうでもいいので口には出さないが実はどうかと疑っているエドだったりする。
「じゃあ、向こうむいテ。」
「は?」
リンの言った意味が最初判らず、エドは間の抜けた声を上げた。
「だかラ、エドが体勢入れ替えテ、向こうをむくんだッテ。」
「オ、オレがって・・・・このまま・・・・その、挿れたままでかよ?!」
「そうそウ、流石に物わかりがイイネ、エドは。」
リンは嬉しそうにニコニコしている。
「馬っ鹿、だから無理って言ってるじゃねえか。」
「ダッテ、エドが上なんだから、ちょっとくらいはガンバッテ貰わないト。後は俺がシテやるからサ。」
ほら、こうやっテ、とリンは腕を伸ばして少々乱暴にエドの体をねじろうとする。
「わ、判った、判ったから!無茶すんな!!」
揺すられた拍子に中で思いがけない所に当たって、エドは悲鳴を上げた。
「ん・・・・・っ」
観念したようにエドはそろそろと少しだけ腰を持ち上げた。
ずるりと中をこすられて、背筋に甘美な電流が走り、エドは思わず背を反らせた。
「は・・・・・ぅん・・・・・・」
ゆっくりと抜けないように気をつけながら、体勢を入れ替える為に繋がった部分を軸に体を回す。
「あぁ・・・・・」
自分だけ動いている気恥ずかしさと、ゆっくりと掻き回されるように内壁をこすられるむず痒い感覚に、自然に声が漏れる。
「ホラもう少シ、頑張っテ。」
抜けないようにエドの腰に手を添えながら、リンはエドが動くのを楽しそうに眺めている。
「あ・・・・んっ・・・・くふぅ・・・・・」
リンに背を向ける形で体勢を入れ替えると、エドは両手を前について息を吐きながらリンの方を振り返った。
「なあ・・・・これでいいのかよ?」
「ん、いいネ。この体勢だとエドが俺のを飲み込んでるのガよく見えル。」
「馬っ鹿・・・・何言って・・・・・・!!」
真っ赤になって抗議しようとするエドに、リンは後ろから両腕を回してエドの膝を捕らえ、両足を大きく広げさせた。
「うわ!ちょ、リン、やだ!」
小さな子供が排泄をさせられるような恥ずかしい恰好に、エドは身を捩って逃れようとするが、相手に背を向けて両足を捕らえられ、体を折り曲げるようにして、しかも下から杭を打たれた状態ではろくな抵抗など出来ない。
「嫌?そんな事ないダロ?」
その体勢でがっちりとエドを抱え込んだまま、リンがエドの耳元で囁く。
「エドの下の口は気持ちいいッテ俺のを締め付けてクル。」
「そ、そんなことな・・・・・ああ!」
抗議する間もなくリンに軽く持ち上げられて、再び落とされる。
ほんの少し動かされただけなのだが、一気に脳天まで貫かれるような快感にエドは悲鳴を上げた。
「なんなラこのまま鏡の前にデモ連れてってやろうカ?自分がどれだけ喜んでるかよく判ル。」
「はっ・・・あ、そんな、い、いやだっ!」
「素直になりなッテ、気持ちいいんダロ?」
「あぁぁぁ・・・・!!」
囁かれる度に幾度も持ち上げられては突き落とされる。
耳から流し込まれる言葉と、楔を打ち付けられるような激しい快感に答えることも出来ず、エドはひたすら声を上げるしか出来なかった。
「ひあぁ・・・・も、ダメ、い・・・・・」
「ん、俺もそろそろイきそウ。」
エドの言葉にならない訴えに、リンも幾分上気した声で返す。
その直後、エドが不自由な体勢のまま背を仰け反らせて快楽の証を放ったのと、体の奥に熱い液体を注ぎ込まれたのはほぼ同時だった。
「おい、リン。」
「ん?ナニ?」
「いつも言ってるだろ、コトが終わったらさっさと離れろって。」
「ん〜〜、いいダロ、もう少シ・・・・」
繋がったまま、背後からエドを抱きすくめようとするリンを、エドは思いっきり体を捻ると、腕で押しのける。
「いだだだダダ、マテマテ、その体勢キツい!俺の息子が捻れル!」
急所をくわえ込まれたままでの無茶な反撃に、リンは悲鳴を上げた。
実際、これはたまらない。
「判ったら は な せ !」
容赦ないエドのやり方に、リンは渋々とエドを抱きかかえていた手を離した。
「本当ニ大人しいのハ最中ダケなんだかラ・・・・・」
リンの膝の上から降りると、さっさと服を身につけ始めたエドを眺めながら、リンは残念そうにつぶやいた。
ちょっと前なら事後は体への負担が大きくてしばらく動けなくて、大人しくリンの腕の中に体を預けていたのに、元々鍛えられた体は慣れるのも案外早くて、最近はムードも何もないとリンは嘆く。
「前はモット可愛かったノニ・・・・・」
「可愛いとか言うな、嬉しくねえ!それにあのままにしてたらどうせもう一回とか言い出すんだろーが。」
エドはフンと鼻を鳴らした。
「あ、判ル?」
そう言ってベッドの上に寝そべったまま、ケタケタと笑っているリンを、エドは嫌そうな顔で睨み付けた。
「とにかく、オレもおまえも本当はこんなコトやってる暇なんかねえんだからな!」
そう言い残してエドは荒々しくドアを閉めて部屋を出て行った。
その扉を、リンはやれやれと言った顔で眺めると、エドには理解不能なシンの国の言葉でつぶやいた。
「とか言いながら、する時は結構ノってくるくせに。」
可愛く俺にしがみついてたのは誰だったかねえ?と独り言を言って、リンは楽しそうに一人クスクスと忍び笑いを漏らした。
END
2006/5/17/UP
なんつーか・・・ヤってるだけですね(^^;)
つか、ヤってるとこが書きたかっただけなんですよ;;
えーとね、騎乗位で入れたまんま体勢入れ替えるのが書きたかったの。なんとかって体位なんだけど、それ載ってたサイトがなくなって、判らなくなった(笑)
ちなみにタイトルの「軽佻浮薄 (ケイチョウフハク)」は「軽はずみで、行動がしっかりしていないこと。考えが浅く、上すべりで移り気な感じ。」という意味だとか。
この文に合いそうな四文字熟語探して、これが一番合うかと思いましたんで。
ちなみに他には「軽挙妄動」「牽強付会」などが候補でした。
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